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大阪高等裁判所 昭和35年(く)49号 決定 1960年7月14日

少年 K子(昭一六・二・一五生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由は、少年K子は性質も温和で、自分独りでは非行をすることができない人間である。家庭も普通の家庭で特に非行をせねばならぬという事情は何もない。少年はふとしたことから男につきまとわれ、同人の悪い計画にそのまま踊らされて非行を続けていたようである。家庭裁判所でも右の男を処罰する方法があれば、むしろその男を処罰したい位だと洩らしていた程であつて、少年を中等少年院に送致したのは、その男との関係を絶つ意味も多分にあると思われるのである。しかし少年の父母親族間では少年を徳島の田舎に帰して、従来の放任主義を一てきし、相当厳重に監督する方が、少年院で一年三ヵ月を送るより効果があるという結論に達した。少年は何分年少者であり、初犯のことでもあるので、今後は父母親族一致協力して少年の更生に努めたいと思うから、今一度原決定を再考せられたい、というのである。

よつて本件少年保護事件記録及び少年調査記録を精査すると、原決定が説示するとおりの少年の経歴罪行歴が認められるのであつて、少年が情夫、P(二十三才位)と共に父母の束縛を離れた放縦な同棲生活をするに至つたについては、右Pもその責任を負うべきもののように思われるが、少年の側においても性格的にかかる生活を受け入れる態勢ができていて、少年はPと別れなければ将来更生の望みがないと言いながらも何等そのための努力をしたようには見えないのであり、昭和三十五年一月末頃三回目の家出以来右Pと共に大阪市西成区方面の安宿に泊り、街娼として生計を立てており、Pはこれによつて怠惰な生活をしているのであつて、少年の虞犯性は相当高く、少年の保護者たる両親の少年に対する保護対策は、無定見で実効がなかつたのである。現状においては少年のこれ以上の転落を防止するためには、少年をPから隔絶するだけでは足らず、収容保護による環境調整と性格矯正とが相当な処置と認められるのである。原決定が少年を中等少年院に送致する処分をしたのは不当とは認められないのであつて、本件抗告は理由がない。

よつて少年法第三十三条第一項少年審判規則第五十条により主文の通り決定する。

(裁判長判事 奥戸新三 判事 塩田宇三郎 判事 青木英五郎)

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